飲んだくれ

新卒で入った SIer の同僚でもある大学の友だちと飲みに行ってきた。その友だちも1年以上フリーランスでお仕事してるのもあり、先達としてのアドバイスをもらったり、いろんな会社の職場のお話をしたりする。

いろいろ思うことがあったので飲んだくれの手記として思ったことを書いてみる。特に落ちはない。

企業論

彼も私も数個の職場を経験してきたわけだけど、最初の会社 (SIer) が一番まともな会社で、マネジメントもしっかりしていたという結論は一致している。彼が言うには、大企業はしっかりしてるんだということらしい。

就職活動でベンチャー企業か大企業かで迷っている学生がいたら、私はまずは大企業へ行きなさいとアドバイスする。ビジネスそのもの、お仕事の責任感、組織としての在り方は、大企業の方がノウハウがたくさんあるし、しっかりマネジメントもされている (と私は思う) 。

残念ながら、ベンチャーは儲かれば何でも良いと考える人、普通の会社では働けないクセの強い人、ビジネス感覚が全くない人もたくさんいる。もちろん大企業にもそういう人はいるのだけど、若い人だと教育指導されるし、年配の人だと窓際に追いやられる。そういうのを実際に経験したり、見たりしながら自分のキャリアを模索できる。

かたやベンチャーはどうか。大抵は見て見ない振りをする。ベンチャーで働くような人は、その会社に長年いるわけじゃないし、そういう面倒くさいことには関わりたくないと考える。私もどちらかと言うとそっちの人間だ。

そういったマネジメントの意識がないとどうなるか。組織として、チームとしてお仕事をして、その成果を再現可能、且つ継続的に一定の品質を担保するという観点が希薄になる。

分かりやすく言うと、たまたま成功するプロジェクトがあって、ほとんどがトラブルプロジェクトになる。

10人以上のメンバーが関わるプロジェクトにおいて、優れたプロジェクトマネージャーの下につくと、その違いが歴然と分かる。そういう意味では、優れたマネージャーの下で働く経験をたくさんした方が良い。大企業の方が優れたマネージャーがたくさんいる傾向がある (そういうお仕事も多い) と言った方が適切なのかもしれない。

個人論

とは言え、私はもう大企業で働くつもりがほとんどない。マネジメントが優れていたとしても、私にとってはそれは窮屈な印象がある。時として、あれをやっちゃいけない、リスクはとにかく避ける、仕事の押し付け合い、優秀なメンバーの取り合いもその代償として発生する。

自分が「正しい」と思ったことを自由にやれる環境は、ベンチャーの方が融通がきく。安定よりも刺激の方が私にとっては毎日が楽しい。

ある程度の規模のプロジェクトの成否はマネジメントが左右する。マネージャーが力量不足だと、プロジェクトはつまらないものになる。失敗する可能性が高いとメンバーの誰もが思っていても、見て見ない振りをしてお仕事するのは相当なストレスになる。

だったら、そんなプロジェクトから身を引いて、新しいプロジェクトを探しに行く方が私にとっては建設的で未来がある。

お仕事を投げ出すというのではなく、マネジメントを改善せずに、現場で何とかしようというのは、その意志そのものは評価するけれど、それが達成される前にその心が折れることの方が多いと私は思う。

間違ったものを間違ったままで正しくしようというのは相当なエネルギーを使う。

閑話休題ベンチャーで働く若い子を見てきて、そういったマネジメントの違いや必要性が分からずに年を重ねていくのは不憫だなと思うようになってきた。ベンチャーは、(大企業と比較して) ちゃんとした教育を彼らにしない。

彼らは、先輩を見よう見まねで育つと思うが、ベンチャーにはお手本となる社員が少ないし、適切ではない行動を取っても然るべき処置が行われないことも多い。

彼らは世の中そんなもんだと思って育つかもしれない。大企業よりもベンチャーの方が社員に対して無責任だ。酷な言い方だけど、ベンチャーで働くというのは、自分で自分を律せないとまともなビジネスマンにはなれない。

その先にあるもの

ベンチャー企業が10年存続するのは、正確な数字は知らないが生存率は 10% 未満だとよく聞く *1ベンチャーは、10年以内にほぼ倒産すると思って働くぐらいがちょうど良いと私は考えている。若い子は、そのベンチャーで働く分には居心地が良いだろうが、あるとき会社が倒産したり、もしくは経営難からリストラされたりしたときに、他の会社でやっていけるのかという視点を強くもった方が良い。

法人は死んでしまっても良いけれど、普通の人は生きていかなければならない。

スペシャリストを目指すなら他に負けない技術力があるか、ゼネラリストを目指すならマネジメント経験があるか。

年を経るごとに市場で評価されるハードルが高くなるという現実をちょっとは意識しておいた方が良いだろう。30歳を過ぎてマネジメント経験がなければ、転職してマネージャーになることは、ほぼ不可能だろうと思う。もしそういった状況になれば、必然的にスペシャリストを目指すしかなく、選択肢が狭まるという現実がある。

結局何がやりたいか

私の場合はどうだったか。

開発がやりたいと SIer に行って、OSS がやりたいと Linux Distributer へ行って、プログラミングがやりたいとパッケージ開発会社へ行って、自由にやりたいとフリーランスになった。この次は英語を使いたい。

たぶん一般的にはこの人大丈夫か?という生き方なんだろうけど、複数の職場を経験してきたおかげで、お仕事に共通するノウハウや人間関係、自身のコアコンピタンスも分かってきた。

OSS が好きなのもあって自由という言葉にはいろんな意義がある。私にとっての自由というのは、お仕事が選べるという状態に近いと思うようになってきた。というのは、一般的なお仕事は難しいと思わなくなってきた。大変かもしれないけど、真面目にやったら成果が出るだろうと見通しが立つ。

私にとってのお仕事は何を任されるか、から何を選ぶかに変わりつつある。