開発とビジネス

開発者じゃないビジネス担当の方がこんなことを言っていてすごくもやもやしていた。

開発者が技術力を発揮して良いサービスを創ろうと考えるのは自由だが、それをビジネス側に押し付けないでほしい。良いサービスとビジネスで成功するかは別問題。

これは全くその通りなのだけど、何かおかしいと思っていた。

私はプログラマーなので、多少は身内びいきのバイアスがかかるのを考慮して読んでほしい。

ここ最近、経営者や営業さん、ビジネスディレクターといった開発者ではない人が、開発者にビジネスを理解しろという場面が私の周りでは増えた。私が経営の不安定な小さいベンチャー企業でばかり働いてきたのもある。

実際、Googlefacebook のような、開発者 = 経営者の大成功を収めたベンチャー起業もたくさん目の当たりにするようになった。

もちろん開発者が財務の数字を理解することは良いことだし、会社としての戦略、顧客の空気を読んで行動するのも良いことだろう。しかしそれは、例えば、いずれコンサルになりたいとか、経営者やマネージャーになりたいとか、個々人のキャリア戦略にあうものが望ましいと私は思う。

開発のスペシャリストを目指すなら、経営や財務が分からなくて良いから、一般の開発者が1年かかることを1ヶ月でできるスペシャリストの方が会社にとって遥かに魅力的だろう。私が働いてきたベンチャーでは、ビジネス側の方にこういう考えが欠落しているように思えた。というのは、開発者は求人すればいくらでも替えがきくと思っているからだ。

冒頭で引用した言葉は、開発者が提案したビジネスサービスに対して、ビジネス側の方が発した言葉だが、こんなことを言われると、開発者は「じゃあ、あとは勝手にそっちでやってくれ。」とへそを曲げてしまうだろう。私ならそうする。私は開発者であって、ビジネスディレクターではないからだ。

開発者にビジネスを理解しろと言いたくなる方は、その前に立ち止まって考えてほしい。そう言うあなたは、

  • 開発の要素技術に詳しいですか?
  • プログラミングができますか?
  • 開発の現場を経験したことがありますか?

書店に行けば、開発に関する書籍はたくさんある。何冊か読めば分かった気にはなるだろう。

現場の (まともな) 開発者は、そんなことは百も承知だ。分かっていてもうまくできないことの方が多い。納期との兼ね合い、歴史的な背景、設計の不備、開発チームの体制、そういった実際の業務とソフトウェアの複雑さに対して、常に葛藤しながら日々努力をしているのが開発者だ。

ビジネス側の方は、開発者のために何ができるだろう?と考えれば、ビジネスを理解しろといった要求にはならないはずだ。

私ならこういうビジネスにしていこうと考えるけれど、それは技術的にどういう難しさがあって、開発にどのぐらいかかりそうか教えてほしい。

こういう謙虚な姿勢が望ましいだろう。

ビジネスを理解していない開発者はダメだみたいな言い方をしてはならない。間違いなく、あなたは開発を理解していないビジネス担当者なのだから。