カラフル

国際子ども図書館日本の子どもの文学 という展示会を見にいったときにたまたま出会った、まさに一期一会な作品だ。

その展示会は一室に近代の、小中学生向けに書かれた絵本や小説、国語の教科書に載っているような作品が展示されていた。30分ぐらいで見て回れる小さな展示会で、ケース内に展示されていて中身を読めないのが残念な感じだった。私も子どものときに読んだ絵本や作品がいくつかあって懐かしくて結構楽しめて、また読んでみたくなったりした。意味や理屈は、昔も今も、全く分からないけど、やっぱり wikipedia:宮沢賢治 の作品が好きだ。

そんな展示作品の中で何となく目に付いたのが「カラフル」だった。装丁が良かったのか、タイトルの語呂が良かったのか、なんか気になっていて、帰ってからも amazon のレビューを見たら評判が良かったので衝動買いした。

子どもの文学向けというのもあり、単純な物語にテンポの良い展開。私は2-3時間ぐらいで読んでしまったのですぐに読めると思う。それでいても、大人が読んでも普通におもしろいと思う。

複雑な事情にみえるものを、シンプルに描いた上で、やっぱりモノゴトには色んな側面があるから単純じゃないんだよ、だから自分で、一生懸命考えて、より良い方向を選択して進んで行けば良いといったように私は受け取れた。私はシンプルな考え方も生き方も好きだから、こういった透き通った雰囲気のする作品は好きだ。

何をシンプルに考えて、何を複雑なものと受け入れるか。そのバランス感覚は、その人の生きてきた経験だったり、人生観だったりするんだろう。カラフルの世界観は、せいぜい10代の主人公からみえる範囲なので、よりシンプルで分かりやすい。そのシンプルさ、分かりやすさといったモノは、大人になっていく過程で分かり難くなってしまうようにも思えた。生きていくのは無駄なものをどんどん背負い込むようなものかもしれない。そういう意味で人生はきっと無駄に長い。

カラフルは、子ども向けにも子どもなりの影響を与え、大人にも大人なりの影響を与えるような、狙ったところをしっかり作り込んでるから、嬉しい相乗効果が出るような良い作品だと思う。嫌なことがあったとき、疲れたときなんかにカラフルのことを思い出したい。

カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)