辞める雰囲気、辞める時期

もう1ヶ月半ぐらい前のこと。殴り書きして放置していたのを思い返しながら書く。

その日は退職する同僚が最終出社日で、夕方からラジオ体操してコロコロで筋トレやって、挨拶まわりやって、みんなに激励されながら会社を去っていった。

うちの会社はちょっとおかしいと思うんだけど、会社を辞めるときの雰囲気がすごく良い。ふつう辞めるというのは何らかの不満や欺瞞があったり、政争があったり、会社のごだごだがあったりしてあまり良いものではない。実際にはそういったことも多少はあるだろうけど、前向きの理由で辞めていく人が多いのか、特にエンジニアは明るく元気に辞めていく *1 。これは2年前から同じ。

辞めた彼は私よりも5歳ぐらい若い、サーバーサイドも UI もこなす優秀なプログラマーでチームリーダーも務めていた。

その日、送別会があったので私も参加していた。聞いてみると、次の職場が決まってるわけでもなく、しばらくはのんびり趣味の開発をしたり、勉強するといったことを言っていた。本当の意味でちょっと疲れたから休もうかといったものかもしれないし、自分で考えていろいろやってみたいといったものかもしれない。堅い会社のおじさんならそんな曖昧な理由で辞めるなと説教するのだろうけど、プログラマーの世界はそんな緩さで良いと私は思う。

いまの技術の世界は広くて、膨大な知識に溢れていて、全てを把握できるわけでもなく本当の意味で真面目に取り込むと正直しんどいと思う。ここで言う「しんどい」というのは、しんどいから大変だとか、しんどいから嫌だとか、そういうのとも違う。日々勉強するのが普通の、そういう職業の感覚の中で、疲れたから休む、飽きたから別のことをするという緩さや余裕がないと心がまいってしまう。いや、これはその彼がそうだと言ってるのではなく、自分がそうだ (笑) 。

送別会のときにちょっと話してたらこんなようなことを言っていた。

いまの職場で技術の上位の方にきているのに不安がある。もっといろいろ学びたい。

そういった話を聞いていて、彼は良いタイミングで辞めたなと素直に思った。環境を変えるのはリスクもあるけど、プログラマーの世界は比較的リスクが小さいように思うし、辞めてもまた戻ってこれるような制度を設けている会社もある。うちにもそういう制度を作ったら?と同席していた管理部の人に聞いたら、制度を作ると別のバイアスや政治力学が働くようになるので制度がない方が (その人の技術力次第で) 何とでもできてプログラマーにとっては有利だと言っていた。だから、うちは制度を作らないとも。

後日、どこかで見聞きしたのを朧げに覚えていたのが何だったのかずっと思い出せずにいたのを アプレンティスシップ・パターン の一節で見つけた。

Be the Worst

http://clabs.org/blog/BeTheWorst

もっと勉強しようと思ったら環境を変えるのは強力なプラクティスの1つだ。

不満をもって辞める人はきっとその不満から逃れられないだろう。挑戦するために辞める人はその時勢に依るだろう。そして、何となく辞める人はたぶん幸せな人だ。

アプレンティスシップ・パターン ―徒弟制度に学ぶ熟練技術者の技と心得 (THEORY/IN/PRACTICE)

アプレンティスシップ・パターン ―徒弟制度に学ぶ熟練技術者の技と心得 (THEORY/IN/PRACTICE)

*1:ベンチャー系の会社だから自身のキャリアを最優先するような人が集まってるはずで当然といえば当然かもしれないけど、もう創業10年以上に経つのでベンチャーとも言いにくいちょっとした中堅企業になりつつある